映画 帰ってきたヒトラーを視聴した

アドルフ・ヒトラーは最終的には自殺をしていますが、その詳細が明確に報じられなかったことから、ヒトラー生存説というものが存在しています。
その「設定」を活かして、ヒトラーは死んだのではなく、2014年のドイツにタイムスリップしてきた、としているのが本作です。


ヒトラーは、全てに観念して自ら命を絶ったはずだった。しかし、2014年のベルリン、元総統地下壕の真上の地面にタイムスリップした。
ヒトラーは、自分の存在を隠すことなく本人として行動するが、市民からは「やたらヒトラーのモノマネが上手い」面白おじさんとしてしか見られない。逆にそのことが幸いして「体を張ったなりきり芸人」としてやがてTVに出るようになった。そのことの波紋がドイツに広がっていき、そして……

という内容ですが、原作の小説も本作もドイツで出版、製作されていることにびっくりです。
ヒトラーの著書「我が闘争」はドイツでは2016年まで禁書にされていたくらいなので、非常にセンシティブなことなんでしょうけど、
戦後から70年以上となり、思ったよりドイツ国民はヒトラー絡みのことを徹底的に忌避するほどではなく、その雰囲気が2012年の同名の小説と2015年の映画公開に繋がったようです。

本物のヒトラーが「なりきり芸人」として現代ドイツで生活するさまがコメディタッチで描写されつつ、現代ドイツが抱える様々な深刻な問題を提示しながら、「もしヒトラーだったら」これらの問題にどう切り込むのかということを「芸人」ヒトラーの口から語らせています。

そこには、ヒトラーにもう一回指導してもらわなければならないほどに、ドイツの政治は混迷している、という痛烈な皮肉が読み取れました。

本作ではヒトラーはかなり好意的に描かれていて、現代ドイツにタイムスリップしてきても、ヒトラーは比較的早い段階で置かれた状況を自覚し、新聞を読んで現況を把握し、さらには現代ドイツが抱える問題にも気づいたりすることで、ヒトラーの優秀さが語られています。スター性も十分で、彼はどの時代にいても人気者になれるほどの天才的才能がある、という印象を視聴者は少なからず持つことになるのですから、本作の演出はなかなかに優れていると言えるでしょう。


これまでひたすら忌避してきたことにも、そろそろ過去を振り返る時期が来た、というドイツ国民に宛てたメッセージを感じつつ、画家としてのエピソードとか、有名なヒトラー映画のパロディに笑わせられながらも、この映画を星10個満点で評価するなら、

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

となるでしょうか。コメディとは言っても、ドタバタでもなく、2分に一度驚かされるようなハリウッド的映画でもないし、ドキュメンタリーのパロディ風の進行ということもあって、若干地味な展開ではあるのですが、非常に切り込んだテーマを最後まで突き通した原作者と映画監督の自信と覚悟に敬意を表してこの星の数としました。

ドイツではもう「古い亡霊」に悩まされ続けることから脱却して次に進みたいのかもしれないですね。何よりもまずドイツで人気作品になったことがその顕れなのかもしれないです。